2012年04月30日

Keith Richards / Talk Is Cheap

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連休、いかがお過ごしでしょうか。私は前回のザ・バンドの記事で「ラスト・ワルツ」に触れたら無性に観たくなり、仕舞いこんでいた古いビデオ(!)を引っ張り出したりしてました。ビデオを見るのは久しぶり、昔はよくこんな画質で満足していたなあと思うものの、輪郭の滲んだような映像がこの映画には結構マッチしていたり。それにしても初めて「ラスト・ワルツ」を観た頃には、ザ・バンドのメンバーが存命二名になってしまう時が来る事など想像だにしなかったのです。ビートルズしかり。
逆にこのキース・リチャーズさん、昔から常にジャンキーでドランカーでいつ死んでもおかしくないイメージがあったから、70才近くの現在まで現役でいるとは想像だにしませんでした。ミックがジョギングしたりアメフトのユニフォームでステージを走り回ってた80年代、キースはすでに上野あたりの土方みたいな風貌になっていて、口の悪いストーンズファンの友人は挨拶代わりのように「キースまだ生きてるねー」等と言っていたものです。麻薬って実は健康にいいのかも、やってみようかな(嘘ですよ嘘!)。
そんな80年代半ば、ミックはソロ活動に力を入れストーンズに寄り付かず、それでもストーンズは「なら俺が」とばかりにキースが主導を取り『Dirty Work』(86年)という傑作をモノにします。これに自信をつけたのか、ミックに対抗すべく(?)作り上げたキースのソロアルバムがこの『トーク・イズ・チープ』(88年)。実は久しぶりに聴いてみたんだけど、いやー腰が抜けるほどかっこいいんです。無法者キースを知性でコントロールする共同プロデューサーにSteve Jordan、ロニーさんに代るサイドギターにWaddy Wachtel、と最良のアイカタを得て、Bootsy Collins(b)、Bernie Worrell(k)、Maceo Parker(sax)等の強力なゲストが参加、しかしそのすべてを脇役に追いやってしまうキースという存在の凄さったらありません。ギターはもちろん、ヴォーカルがまたいいのです。キースはストーンズで何度もメンフィス・ハイ・サウンドへの憧れを表明し、その租借を試みていますが、このアルバムではそれを更に深化させています。そしてとうとう本家ハイのWillie MitchellをアレンジャーにThe Memphis Hornsを従え録音された「Make No Mistake」、この曲の歌心あふれる歌唱は涙腺ゆるませずには聴けません。ミックのソロ活動はコンテンポラリーなサウンドを取り入れMTVを活用し、ロックスターというパブリックイメージを自らなぞることで満足している印象がありました。それに対しキースは本作で相変わらず自身のルーツへの探究心をエネルギーに「まだまだ満足できないぜ」と言っている様に私には聴こえるのです。
どこかで読んだ当時のインタヴューから、エピソードを一つ。本作を録音し終えたキースの所へふらりとミックがやってきたそうです。感想を聞こうと完成したばかりのテープをかけるのですが、ミックは全く関係ない馬鹿話をしてげらげら笑ったりしてるばかり。何だこいつ聴いてくれないのか、と思ってるところに電話が入り、それを受けるためにキースはいったん席をはずします。戻ってきて部屋を覗き込むとミックが曲にあわせ踊り狂っていたそうです。「だからヤツもたぶん気に入ってくれたんだろう」とキースは結んでいました。何度も確執を繰り返しつつそれでも同じステージに立ち続ける、その理由が解るような気がして、なぜか忘れられずにいるエピソードなのです。(今回は敬称略)
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2012年04月29日

The Band / Moondog Matinee

Moondog Matinee

お久しぶりです。諸事情により引き続き更新サボっておりましたが(すいません)そんな折、ザ・バンドのLevon Helmが亡くなったとのニュースが飛び込んできました。迂闊にも長らく闘病中だった事も知らず、訃報もツイッターでメッセージをやり取りしている方に教えていただきました。映画「ラスト・ワルツ」を観たのは今はなき自由が丘の名画座であったろうか、映し出されたミュージシャン達の演奏に圧倒され、それを道しるべに米国ルーツ音楽へずぶずぶと嵌っていった私です。敬愛するミュージシャンの訃報を聞いても残念に思いはするものの、これほど感傷的になるのも珍しい事であり、自分でも驚いています。あの黴臭い暗闇で息を呑んでスクリーンを見つめていた、夢のような十代の頃と同じ気持ちで音楽と向きあう事ももう二度とないのでしょうが。
そんな訳でザ・バンドを一通り聴き返してみました。この『Moondog Matinee』(76年、ベアズヴィル・スタジオ録音)はカヴァー・アルバムという事もありイマイチ地味な印象でしたが、聴き直したら、彼ら自身の曲は無いにもかかわらず、メンバー達の若い頃のことが歌われている、そんなふうに聴こえて更に感傷的になってしまったのです。
元は米国のロカビリー歌手Ronnie Hawkinsのカナダ・ツアーにレヴォンさんが参加した事に始まり、酒びたりの過酷な巡業にメンバーが次々と帰国、現地でメンバーを補充していったというのがザ・バンドの成り立ちです。このアルバムではそんな巡業先でジューク・ボックスでかかっていたであろう、またロニー師匠の衣装替えの間に彼ら自身演奏したかもしれない、Fats DominoやSam Cooke、Lee DorseyなどのオールドR&B/R&Rを取り上げ、いつものように交互にメンバーがヴォーカルを取っています。レヴォンさんの歌唱では冒頭の「Ain't Got No Home」がいい、ノリノリのピアノにホーンのリフ、ドラムを叩いてるのはリチャードさんかな?畳み込むようなうねるビートがまさにザ・バンドそのものなのです。プレスリーのヒット曲をファンキーにカヴァーした「Mystery Train」、Chuck Berryの「The Promised Land」もレヴォンさんの歌唱で、他メンバーの歌ではリチャードさんの「The Great Pretender」、リックさんの「A Change Is Gonna Come」が素晴らしい。白人の黒人音楽カヴァーとしては最高の名演でしょう。インストの「第三の男」のテーマ曲も粋な感じ。
メンバー間の軋轢もあった当時、曲ごとに楽器を持ち替えシンプルな懐かしい曲で演奏を楽しむことで、バンドの原点を確認しようとしたのでしょうか。単に曲が出来なかっただけなのかもしれないけど、レヴォンさん以外カナダ人の彼らにとって、これらの曲はアメリカそのものだったのかもしれません。そしてジャケ、CDでは黒地にタイトルロゴのシンプルなものですが、オリジナル盤は大きなポスターに包まれていました(下の写真)。これがまたいい感じで、Edward Kasperという人が描いている、他にどんな絵を描いているんだろう?
などと書いていたら、御大ディランがレヴォンさんへの追悼コメントを発表したとのニュースが。「私はまだ初めて彼に会った日と、最後に彼を見た日を覚えています」シンプルなのに、苦楽を共にした彼らの深い心のつながりが感じられる言葉に再び涙してしまいます。
ところで短期間、レヴォンさんはJesse Ed Davis、Leon Russellとバンドを組んでいたらしいけど、誰か音源を発掘してくれないものだろうか。

Moondog Matinee
 
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2012年04月02日

新宿路地裏からの挨拶状

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このブログには一応アクセス解析というものがあり、どんな検索語から来ていただいているのか判るようになっているのです。あまり見ていなかったんだけど、最近チェックしたら意外な言葉がけっこうあって面白い、通りすがりの皆様ありがとうございます。
驚いたことに「Anchor Trading」、そして「アンカートレーディング」で検索してくださった方が何人かいらっしゃった。これは私が友人と新宿で始めた店の店名(仮称)なのですが、プロフィールに書いたとおりいまだに準備中で、諸事情によりたまにしか開けられない状態が続いています。それでも看板やドアの貼り紙にこの名称の表記があるから、「いつも閉まってるこの店って何だろう?」と怪訝に思った方がスマホなどで検索して下さったのではなかろうか?と推測しております。その数名の方々にお礼申し上げます。
常時営業できる日もそう遠くない事を願いつつ、少しサボってたけど、また更新します。今日は軽く中間報告ということで、ではではー。
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2012年03月25日

Wild Cherry / Same

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ワイルド・チェリーの事を知らなくても「Play That Funky Music」を聴けば誰もが「知ってる!」と思うのではないでしょうか。しかしこの曲を知っててもこのバンドの他の曲を知ってる人はそう多くないと思われます。いわゆるワン・ヒット・ワンダー、一発屋として、ザ・ナックや日本のトムキャットみたいに揶揄される事も多いワイルド・チェリー。実際にはこの曲の後にも小ヒットを出しているのですが、「Play That〜」があまりにも突出したヒットとなり、スタンダード化し長く聴かれ続けているため、いつの間にかそんなイメージになってしまったのではないか、なんか不憫だ。日本のテレビでも「ダンス甲子園」のテーマに使われていたのは記憶に新しい、いや、ちっとも新しくないか。
ディスコっぽいファンクはあまり聴かない私ですが、このアルバムはけっこう気に入ってよく聴いたものです。実はこのバンド、ゴリゴリのファンクでありながら、メンバー全員白人のバンドなんですね。だからモロにロックっぽいギター・ソロが入っていたり、西海岸あたりのロックバンドがよくやる白人ファンクみたいな曲も多く、私好みなのです。なにしろ「Play That〜」の歌詞には「昔はロックンロールをやっていた」なんてフレーズもあって出自を明かしている通り、最初はハードロック的なバンドだったそうです。彼らの出身はオハイオ州、ザップやオハイオ・プレイヤーズを輩出した土地柄、そして折からのディスコ・ブームと自然にファンク指向になっていったのではないでしょうか?
これはデヴュー・アルバム(76年)ですが、当初こういう黒人向けの音楽を白人がやっても売れない、という営業上の姑息な理由から、顔写真を公表せずに売り出されたそうです。おがげでこのような艶めかしい傑作ジャケになったのですが。
ところでここまで書いて、トムキャットってどうしてるんだろう?とふと思い検索したら、トムさん(溶接工みたいなサングラスのボーカルの方)の公式サイトを発見したものの、しばらく更新されていない様子でした。やめてしまったのだろうか、気になる。まあ、あの曲しか知らないんですけどね。

タグ:FUNK SOUL
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2012年03月18日

Skip Battin / Skip

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ザ・バーズはメンバーチェンジを繰り返し、後期にはデヴュー当時からのメンバーはRoger McGuinnただひとりになってしまいます。そんなマッギンさんの元へ、アサイラムレコードを設立して目玉になるミュージシャンが欲しかったデヴィッド・ゲフィンから「オリジナルメンバーでバーズを再編しないか」というアイデアが持ちかけられます。マッギンさん、後期バーズが活動中だったのにも関わらずこの話に飛びついた。なんてテキトーな人なんだ、見損なったぞ。現役バーズのメンバーは怒らなかったのだろうか?とはいえ71年にGene Clarkの3作目の、一度は未完に終わるソロ作「Roadmaster」の録音で初期メンバーが顔を揃えているので、その時からそんな構想はあったのかもしれません。さすがに二つのバーズを掛け持ちする訳にもいかないマッギンさん、後期バーズは解散させ、発表されたのがアサイラム盤「The Byrds」(73年)なのですが、職を失った(?)後期バーズのベーシスト、Skip Battinが同じ年にリリースしたのがこのソロアルバムです。
再編バーズはクロスビーさんが主導をとり、アサイラムらしいウエストコーストロック的な音になったのに対して、このバッティンさんのソロの方がずっと後期ザ・バーズっぽいのが面白い。それもそのはず、Clarence Whiteが全面的にギターで支援、マッギンさんも罪滅ぼしか(?)12弦ギターを弾いているんだもの。そして聴くほどに、やはり後期バーズのほろ苦ノスタルジックなテイストはこの人のものだったのだのだと思うのです。軽快なホンキートンク・ピアノに導かれる一曲目の「Undercover Man」から彼の持ち味である、古き良き安酒場的な作風の曲が並びます。続く「Ballad Of Dick Clark」で聴けるノリノリのギターはクラレンスさんの名演中の名演でしょう。そして「Captain Video」ではディラン・テイストのフォーキーな曲調にマッギンさんの12弦、とまんま後期バーズ。シンコベーションが強烈な「Four Legs Are Better Than Two」、『Byrdmaniax』に入ってる「Tunnel Of Love」を思わせるスロー・ブギの「Cobras」など、味わい深い良曲揃い。バッティンさん本人のだみ声の歌唱も味わい深く、signpostというマイナーレーベルからのリリースのためかイマイチ地味ですが、じんわり染みる哀愁の一枚なのです。
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2012年03月12日

The Byrds / Byrdmaniax

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震災からもう一年ですか。テレビ番組表が「がんばろう」とか「絆」とか、そんな言葉で埋め尽くされていた。何だか「絆」という言葉も聴き慣れすぎて軽くなってしまったと感じるのはわたしだけだろうか。
今日はキモ美しいデスマスクのジャケが印象的な、ザ・バーズの10作目(71年)です。そのギター奏法においてカントリー・ロックに革新をもたらしたClarence Whiteが在籍し、演奏力では最強の時期の作品、悪いはずがありません。ところがこのアルバム、発表当時は失敗作だとけちょんけちょんに酷評されたそうです。ソニーの名盤シリーズで出ていたレコードのライナーにはそんな経緯が書かれていたのですが、最初輸入盤で入手した私は露とも知らず、けっこう気に入ってよく聴いていました。
メンバーが変わると共に常に新しいサウンドを取り入れ、シーンをリードしてきたRoger McGuinnですが、ここでは分厚いストリングスやホーン・セクション、女声コーラスまで加えたポップな音作り。当時の風潮から言って「商業的」「オーバー・プロデュース」などと言われそうな要素がみんな詰まっているし、さらにツアーの合間の短時間でのレコーディングで、完成度が今ひとつなのも事実でしょう。プロデュースはお馴染み、この頃Equinox Productionを設立したばかりのTerry Melcher。バンドはベーシックトラックを録音後すぐツアーにでてしまい、「テリーが勝手にストリングスなどをオーバー・ダビングしてしまった」(ロジャー談)「いやロジャーは承知してたはず」(テリー談)などと泥仕合まで始める始末。
そんなアルバムですが、何と言っても最初と最後の曲が素晴らしい。イントロのピアノにギターが絡むところから心躍る「Glory,Glory」は初期のバーズを思わせるようなポップな曲ですが、ポップなだけでなくスワンプ風味のアーシーな味わいもある。最後の「Jamaica Say You Will」はデビュー前だったJackson Browneの曲。曲の良さはもちろんのこと、クラレンスさんの歌唱がとてもいい。ジャクソンさんもこのヴァージョンは気に入ったのでしょう、本人のデヴュー盤ではギターにクラレンスさんを招いて録音しています。他に私の好きなのはSkip Battinの曲。スローなブギにしてくれ、と言われたら迷わずかけてしまいそうな「Tunnel Of Love」、ボードヴィル調の「Citizen Kane」と、古き良きアメリカっぽいノスタルジックな持ち味を発揮、それに続くロジャー作の「I Wanna Grow Up To Be A Politician」もスキップさんの影響だろうか、オールドタイミーな味のイイ雰囲気なのです。考えてみりゃロジャーさんってすぐ他のメンバーに影響される、けっこう優柔不断な人なのかもしれない。
posted by FUKU@Anchor Trading Co. at 00:41 | Comment(0) | TrackBack(0) | ロック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする